【コラム】今年の見所は「蘇っていくブルーインパルス」2019年度松島基地航空祭

復興の象徴 : ブルーインパルスが本拠地で魅せた「夢」を叶える力

2019年度 松島基地航空祭直前にブルーインパルスが現在の2機編成から3機編成になるかもしれないという情報が入ってきた。

ご周知の様に、三沢で発覚したエンジンの不具合により、今春から全国のT-4練習機に対し「飛行停止」の決定が下されてしまった。 飛行停止は原因発覚と改修により解除されたものの、同じT-4練習機であり同じエンジンを使用するブルーインパルスにも例外はなく、ツアーのキャンセルやスケジュールの未定が発生する事態に。

東松島夏まつりのポスターを拝見する限りブルーインパルスの掲載写真は4機編成である。 飛ばない、または飛べないかもしれないという懸念の残る状況下で4機のT-4が告知に使用されているということは、当初の「理想的なリカバリー計画案」では、夏まつりに飛ばすT-4は4機編成だったのではないかとの推測もできる。 2機から3機へたかが1機かもしれないが、直前に起きた「1機追加」にはとても大きな意味が隠れていたような気がしてならない。

T-4といえば学生が操縦技術の取得の為に乗ることを目的に導入された練習機。改修済みのエンジンを広報部隊優先に供給することは「未来」への投資ではあるが、「現在」にこの先埋められない穴を開けてしまう懸念も出てくる。

ブルーインパルスを観たいという願いと、何とかブルーインパルスを飛ばしたいという願いはフェンスを境に共鳴し、「+1機分」の原動力になったに違いない。人々の希望はまた一歩夢を取り戻し、東松島を包みこむような歓声をもたらした。

3機のブルーを観にに5万人が来る事の意味

松島への飛来は久しぶりとなる米軍F-16戦闘機。機体が持つ性能を遺憾なく発揮した超絶機動飛行が松島の観客の度肝を抜いた(写真: 特派員I)

昨年の松島基地航空祭の午前は、荒天によりブルーインパルスの展示飛行はキャンセル。午後も天候悪化の予報があり、多くの観客は来場を諦めたり、午前中で帰路についてしまったかたも多かったのではないかと思う。

今年も午後から天候悪化の予報があり、また千歳同様、2機で展示飛行を実施すると思われたブルーインパルスを見に行こうというファンにとっては「悪天候で2機」という不安や懸念を持っていたのではないかと思われる。

そして当日、その推測は「余計なお世話」であったと言わんばかりの人が松島基地航空祭を訪れた結果となった。午後になっても次々と人の波が門に向かい、シャトルバスの行列、矢本駅の入場規制、昨年とは明らかに違う光景が。

3機編隊で迫力ある展示を見せるブルーインパルス。米軍F-16と姉妹機とも呼べる国産戦闘機F-2、退役が迫るRF-4ファントム(写真:特派員I)

3機分の不足を補うようにF-2戦闘機が午前2回、午後1回、計3度の機動飛行を行い、米軍F-16デモチームが会場の度肝を抜くフライトを行い会場を盛り上げる。

例年に無いアグレッシブな展示はブルーインパルス3機分を補填する展示であり、来場者の主目的はやはりブルーインパルスであったことは間違いない。

たとえ2機であろうが3機であろうが、ブルーインパルスという存在は空のキャンバスを使い、観る者に「挑戦、創造、夢、希望」そしてハートを通じた「愛」のメッセージを送る発信者であり、多くのファンはブルーインパルスを飛行機として狭い視点で観に来ているのではなく、「ブルーインパルス」という発信者の存在を五感で『感じるため』に観に来ている事を改めて感じた航空祭となった。

▲初披露となった301飛行隊特別塗装機。昨年のオジロワシに続き今年は301と501飛行隊の2機が今年の航空祭のツアーを行うものと思われる

▼ブルーインパルスに魅せられた者にとって機数はさほど大きなファクターではなく、ブルーインパルスが青い空を優雅に飛ぶ事に魅せられていること。そんな事を確信させられた。単機でも凄い人集りが。